『死の淵を見た男』を読んで

 

 

福島第1原発事故について意外に知ってることが少ない。そう思って読み始めました。

 

読む前に知っていた事といえば

  • 高線量の放射能が漏れた
  • 津波により設備が破壊された
  • 一連の事故で死者が出た
  • 東京電力がエグいことになった
  •  

このぐらいですね。恥ずかしいぐらいなんにも知りませんでしたね。

 

読み終わって新しく知った驚くべき事実としては

  • 事故直後に菅総理が訪れ自衛隊の作業に多少の支障をきたしたこと(過度な政府の介入)
  • 津波により若い2人の命が失われた事
  • 吉田所長が事故から2年半ほどで亡くなったこと
  • 事故発生後に逃げ出さずに多くの作業員が自らの意思で原発に残り冷却の作業をしたこと
  • 原発事故では、停止→冷却→封じ込めの3段階の作業が重要になること
  • 事故発生直後はチェルノブイリの10倍の被害規模になる事が想定されていた(東電社員の必死の冷却作業で免れた)

ということである。

 

 

福島第1原発の事故をノンフィクションで描いた今作品。著者門田さんの徹底的な調査により福島第1原発事故の全てが克明に描かれています。当時東電の社員吉田さん、伊沢さんを中心とした物語構成になっており様々な人の証言に基づいた嘘偽りの無い話になってます。

 

放射能の中、原発に残って命を顧みずに作業に当たった人々がいた事に胸を打たれました。そしてその事実を知らなかったのがとても恥ずかしくなりました。故郷、この国を命がけで守ろうとした人々はもっと称賛されるべきはずであると思いました。しかしそれを引き起こしたのもまた東電自身でありなんとも言えないですね。彼らが事故現場から決して逃げる事をしなかったのはなぜなのだろうと誰もが思うはずです。誰しも自分の命が惜しいし守るべき家族、心配してくれる親がいるわけで、その状況において作業に取り組むと言うのは筆舌に尽くしがたい使命感というものがあったと思います。この使命感こそ日本人の美徳なのでは無いかと感じました。

 

あれから

東日本大震災から9年が経過しました。当時は小学生で震災が起きたときインフルエンザを患い家でモンスターハンターでドスフロギィを狩猟している最中でした。それぐらいあの瞬間は覚えています。あの時感じた恐怖心や家族の安否を心配したことを決して忘れる事はないでしょう。あれから成長して私もこブログ書くほどに大きくなりました。

 

 

いま思うこと

現在日本のエネルギーは大部分を火力発電によって賄っています。それは福島第1原発の事故もその一因になっています。フランスではこの事故以来原子力発電所が廃止される事まで決まりました。放射能が人体に与える影響を鑑みると原子力発電所を推進する潮流は時代錯誤な印象を受けます。日本でもここから先は原子力発電に頼らずに、かといって火力発電という環境への悪影響の大きなエネルギーに頼る事なく発電ソースを模索していく必要性があります。今のところ再生可能エネルギーとして太陽光発電が期待されて投資家も注目で、各地に設置が始まっています。しかしそこで新たな問題も生じてきています。例えばソーラーパネルを設置した事で土砂崩れが発生しやすい状況になり現地住民から非難の声が上がるなどといった新たな問題を誘発しているのです。太陽光発電は単に再生可能エネルギーとしての素晴らしい役目を果たすだろう!という印象を幼い頃からの教育で受けてきましたが改めて考え直さなくてはならないと思います。私自身はエネルギーに精通している訳でもないので、新たなエネルギーソースを開発できるわけではありませんが常に情報を取り入れて社会に良い影響を与えるべく発信したりして貢献していければ良いなと思います。

 

 

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 (角川文庫)